猫の魔力

自分が猫を飼うなんて、子供の頃は全く思わなかった。私が猫に対して持っていたイメージといえば、凶暴、不潔、不気味。

これらのイメージはほとんど母から植え付けられたものだ。母曰く、「猫は人のご飯を盗るし、外歩いた足で家の中も歩くから汚い。それにおしっこが臭い。」とのこと。だから実家では猫を飼ったことはない(犬はいたけど)。外でノラ猫を見かけても、何となく近寄り難かった。実際近寄ったところでたいがいのノラ猫は逃げちゃうし。


そんな私が何故猫を飼おうと思ったか。きっかけは猫飼いの人たちとの出会いだ。

猫飼いの人たちは皆とてもいとおしそうに猫を見つめる。そしてそうやって愛情を注がれた猫は、よそ者にも警戒心が薄い。初対面の私にもすり寄ってきてくださる。完全室内飼いだと不潔な感じもしない。

その可愛さに私の猫に対する見方も変わり、自分でも飼いたいと思うようになった。しかし自分だけで飼えるのか?お世話できるのか?というと、自信が持てず…。

そこで背中を押してくれたのがJさん。ペットショップで見かけたスコティッシュフォールドのオスの子、Jさんがこの子がいい!と買う気まんまん。私もその子の可愛さに負けて、一大決心。共同購入、共同飼いというスタイルをとることにした。背中を押されたというより手を引っ張られた感じかな(^_^;)


さて、そうやって飼い始めた猫だが、最初は臭いが気になって仕方なかった。おしっこやうんちの臭いそのものよりも、猫砂(おから系)が臭くて、私もJさんも頭が痛くなってしまったのだ。本当にお世話できるのかしら…とても不安だった。「返品」のふた文字が頭をよぎるほどに。

その後脱臭機を購入し、だいぶ臭いは気にならなくなった。それに、くんくんしてみると猫のからだ自体は別に臭くないことが分かった。猫は案外きれい好きだからなのか?意外な発見だった。

おしっこなどの世話も基本はハムスターと変わらない。ちとスケールがデカくなっただけで。


そして何より、可愛い!

Jさんが選んだこの子、臆病でおとなしい性格。そしてスコの特徴なのか、足が短くて何だかどんくさい。おどおどしながらもだんだんなついてくれて、ゴロンとお腹を上に向けて無防備な姿を晒してくれる。

朝は枕元に来てゴロゴロとのどを鳴らして起こしてくれる。猫が朝早く起こしにくるというのは聞いていたが、もっとニャーニャーとうるさく鳴いて起こしにくるのだと思っていた。人間の様子を伺いながらそーっと近づいてくる様子が何ともいじらしい。

物を落としたりかじったり、人間を引っかいたり咬んだり、そりゃあ悪さもする。でも叱られてしょんぼりうつむく姿がまたかわいい。


ああ、もう、自分がこんなに猫好きになるなんて思わなかった。もうこの子のいない生活は考えられない。もうずーっと昔から猫はペットとして愛され、人間とともに生きてきた。人間が猫から離れられない理由がやっと分かった気がする。怖るべし猫の魔力。