風立ちぬ

まず最初のほうに出てくる地震のシーン、大地の怒りというか、そういうものが伝わってきて不気味だった。下手なCGなんかよりもよっぽど。

病気だけどけなげに尽くしてくれる妻、そして飛行機のマニアックな描写。監督の好み丸出しだなあ。

主人公の声をあてた廣野監督は正直やはり素人演技。終盤のあたり、ほかの方がやっていればもう少し複雑な心情が伝わってきたのでは?と思った。

エンドロールが流れたとき、え、これで終わるんだ、と少し驚いた。主人公がもう少し後悔や懺悔をするかと思ったのだ。しかしそれがなかった。

観客が主人公に対し「自分の作ったものが人の命を奪う道具として使われたことに対する反省や後悔、懺悔はないのか?」という疑念を抱くであろうことは製作者側も当然予測していたのではないか?しかしそれに対して特にエクスキューズせず、「夢を追った男」という部分だけをあえて描いた。ある意味観客放置。

宮崎監督の「いいじゃん、もう自分も年だしさ、好きなもん作らせてよ。反戦メッセージとか小難しいことは抜きでさ。」という心の声が聞こえてくるようだ。

傑作とほめるほど心酔できず、さりとて駄作とコケおろすには惜しい。カプローニとの夢の中のシーンや地震のシーンの迫力はやはり圧巻だったので。というわけで60点くらいかしら私的には…。