指標

「先生、うちの主人も歯が悪いんで今度診てもらえますか。」
こういうふうに患者さんが家族の方を連れてきてくれるのは大変嬉しい。単純に新患が増えるからありがたいという意味だけではない。身内の方を連れてきてくださるのは、その患者さんご自身が私たちの治療に満足してくださっているからだろうな、と思うからである。


患者さんはたいてい治療後に「ありがとうございました。」「お世話になりました。」というような言葉を残していく。しかし、本当に治療に満足して帰っていただいているのか?もしかしたら形式的、慣習的に「ありがとう」と言ってるだけかもしれない。心の内は違うのかもしれない。患者さんの満足度を私たちの側から推し量るのは難しい。だからこそ「家族を連れてくる」という行為は目に見える指標として貴重なのだ。


もうひとつ目に見える指標がある。それは普段一緒に働いてる衛生士が「先生、手が空いたときに私の歯診てください。」と言ってくれること。彼女たちは歯科の専門知識があり、普段私の治療を間近で見ている。その彼女たちに「この先生になら診てもらってもいい」と思ってもらえるのはとても嬉しい。もっとも仕事中はなかなかスタッフの歯を治療する時間がないのだけど。


小心者の私はそういう目に見える指標がないと時々不安になる。自分はこれでいいんだろうか、と。そして時々自分の存在意義を確認しては悦に入るのである。自己満足かもしれないけど、いいの。